感共建築ラボとは?
「感共」という言葉は聞き慣れないかと思います。
建築の分野において普通は「環境」という言葉を使います。これは「環」×「境」ですので、領域の境で物理的に計測できる数値を扱うということになります。分かりやすいところでいえば、建物の「屋外」と「屋内」に境目がありそれぞれの計測される数値は違ってくる訳です。
屋外が寒くても屋内が快適なるようにし、また屋内の快適さが屋外に逃げないように境目となる外壁などの外皮と呼ばれる部分に断熱材を計画したりしています。
確かに学問的にはもしくは設備機器を製品化するにはこの方が扱いやすいのですが、最近はこれらに関する数値が一人歩きしてしまい、もともとの趣旨である「私たちの体感でかんじる快適さ」が見えづらくなってきています。
そこで、まず「ひとがどう感じるのか?」というところより暮らしや活動を考えるためにラボを立ち上げ、さまざまな切り口から検討を重ねていく中で、「感じる」×「共に」をキーワードに「感共建築」という言葉が生まれました。
「居心地が良い」とは?
暮らしを包む建物は、命を守る物理的なシェルターであると同時に、安らぎと平穏を包み込んだ心のシェルターでもあります。
そして生理的な快適さも合わせ持つことで「居心地良さ」を私たちは感じています。
感共建築ラボは、そのような居心地の良さを探求していきたいという想いを抱いた建築家により設立したグループです。
「整えられた室内環境」とは?
最近の建物は、省エネ政策による補助金などを利用して高断熱・高気密を競い合い、建物の魔法瓶化が進んでいます。たしかに、省エネ等級などで示されている整えられた室内環境を保持すれば無駄なエネルギーの利用を抑えることができますが、建設時に相応のコストがかかることになります。
そして、そもそも「整えられた室内環境」とはなんでしょうか?
いくつもの工学的指標がありますが、例えば、快適温度については下記に示す範囲が一般的に良いとされています。
快適温度(快適な範囲)
【夏期】
温度: 26~27℃
湿度: 50~60%
気流: 0.3m/s
【冬季】
温度: 20~22℃
湿度: 45~60%
気流: 0.3m/s
これをみて「うんうん、そうだよね」と、どのくらいの方が思われるでしょうか。まず、数値がどのような体感であるかが分からない方が大半ではないかと思います。
ひとそれぞれの快適さを求めよう
上記のように、基準として使われている指標や数値は、特定の状況(座って落ち着いている状態)における多数の人の感じた統計より出てきた数値ですので、これを守れば「居心地が良い」とは必ずしもなりません。実際は夏の暑い時に海辺で海の家で汗をかいていても「気持ちがよい」と感じたり、状況によって感じ方は変わります。
私たちはかなり自己中心的(主観的)に快適さを捉えていますので、ひとによってその状態はちがいます。ちなみに筆者は湿度が高いのが苦手で、また暑くても風があれば(それも強めが好み)快適と感じます。一方で、ある程度の人が温かさを感じる気温であっても風があるだけで「寒い」と感じる体質の方もいます。
感共建築ラボでは、建築の環境工学的な面だけでなく、このような主観的であり、心理的・生理的な面をあわせて考える「ひとを大事に」暮らしや活動を研究しご提案しています。
「共に」を大切に
そして、居心地の良さにはもうひとつ大事なことがあります。
それは、ひととのつながりです。
わたしたちは誰かといることで心が安らぎ、何かあった時でも助け合うことで「居心地の良さ」を感じます。それは家族であったり友だちであったり恋人であったり隣近所であったりします。このような「コミュニティ」を育みそだて、そして維持していくことを私たちは大事にしています。
まとめ
このように「居心地の良さ」を求めていくと、
《体に優しく快適な温熱環境×コミュニティ》=『シェアードハウス』
というものが見えてくることになります。
感共建築ラボのシェアードハウス(シェアハウス)は、私たちのコンセプトを実現するスタイルとして、広く居心地の良さを提供して参りたいと考えています。
2016.12.3改訂
感共建築ラボでは「ひとり」と「みんな」を中心に建物単体から地域の環境やコミュニティ、そしてエリアマネジメントまで幅広く調査・研究・企画設計活動を行っています。詳しくは公式サイトをご覧ください。