これまでのアパート賃貸経営
資産運用の話題になると、アパート経営やマンション住戸のサブリース(転貸)という選択は必ず出てくる分野です。とりわけ1990年代までのバブル時代は多くの方がこれらの手段で資産活用を図ってきました。そして一昔前までは損益分岐点が20年超というロングスパンも中にはありましたが、多くは相続税対策により受け入れられてきた側面があります。
さて、このような運用をされてきた大家さんの事情に変化が出てきています。
まずひとつは空き室率の増加です。神奈川県内における空き家率は12%程度となってきており、またこの過半は実は集合住宅となっています。つまり集合住宅住居の供給過剰な状況であるといえます。こうなると特別な特徴がなく家賃が同じだとすれば、当然に古い集合住宅よりも新しい住戸の方が人気が出るため、築年数の古い住戸程空き家となる確率は上がります。
多くの大家さんが所有している集合住宅は、かなりの数が築20年以上となっているので損益分岐点は通過しているかと思いますが、固定資産税や建物の維持修繕費用等は家賃より捻出する必要があります。そして、いずれ解体建て替えを目論むのであればその資金確保として積み立てもしていきたいところです。
ところが、これまでの集合住宅のつくり方は、立地等の基礎情報による不動産評価鑑定や住戸の面積/部屋数などで相場感が形成されています。どれも同じような考え方で計画をしている物件が多いということはつまり横並び状態となり、他に有利な点がなければ前述の通り築年数が積み上るごとに新築との競合で不利になるのは当然です。こうなると家賃を下げてディスカウントするしか方法がありません。いわゆるデフレスパイラルに陥ることになります。
少しでも入居者を増やすためのPRとして、クロスの張り替えや設備機器の交換などがあげられますが、それも常態化しているため物件を探している方からすれば新鮮味はありません。さらに、2、30年前のライフスタイルと現在のライフスタイルは変わってきているのでこの点も新築有利となります。最近はようやく間取りを変えていまのライフスタイルに合わせていく方法が登場し始めてきていますが、これも外観にレトロ感があるとか耐震性が一定担保されているなど、既存建物の質が良くなければコストに見合う家賃設定になかなかたどり着かないためできる物件は限られてきます。
経年変化に影響を受けない賃貸経営
このように賃貸経営においては、立地や住戸面積/部屋数だけでは時間とともに空き室が増加し資産運用が先細りしますので何らかの対策が必要になります。特にこれまでの賃貸経営においては、はじめに立てた計画だけで突き進むことが多いため建物の維持管理や社会情勢の変化のほか、ライフスタイルのトレンド変化などに対応できないやりっぱなし計画になっています。その最たる例がマンションの建て替え問題ともいえるでしょう。これからの時代は人口減少に続き世帯数も減少に転じていきますので、経年変化に影響されない程よく入居率の確保できる安定した賃貸経営計画と事業の出口戦略が必要になるといえます。
より個性的であること
戦後、日本は居住施設の需要に供給が追いつかないところから質より量を重点的施策として住宅施策としていました。そして、気づけば需要と供給のバランスが逆転してきました。また、住むところがあれば良いというところから生活の質を求めるようになってきました。年代ごとのトレンド要求も多岐に渡り、より趣味的な付加価値感を暮らしの中に求めるようになったのは、豊かであるが一方でストレス社会という現状を強く反映しているとも思えます。
このように、賃貸住宅市場は皆が同じ物を求める時代からそれぞれの個性に合わせた多様な居住環境が求められるという、より個性化の時代へとパラダイムシフトしているといえます。
ではこのような時代の中で賃貸市場の可能性はどこにあるのでしょうか。
所有せずシェアして生活を楽しむ
ひとつは、「生活を楽しむ」というライフスタイルトレンドが拡がると考えられます。
ひとはそれぞれエイジングスタイルがあり、学生の一人暮らし、社会人で独身での暮らし、結婚してディンクスでの暮らしなどなど暮らし方や楽しみ方は変わります。また、デフレが長く続いたことによる資産をもつという価値観が、世代が若くなる程に低下しているため持ち家よりも賃貸で移り住む方がいろいろ楽しめて良いという動きが出てきています。ほかにも自動車や仕事などさまざまな面でシェアする文化が拡がってきています。「やみくもにお金をかけずともできることがたくさんある」ということに気づき出しているといえますね。
コミュニケーションをシェアしよう
つぎに、コミュニケーションをシェアするという動きが活発になってきています。これはとりわけ20代〜30代で起きているムーブメントかと思われます。
1970年代以降に多くみられたのが、新築で持ち家を建てて子供部屋を個室にするというトレンドでした。豊かさを享受するという意味合いもあったかと思いますが、一室一用途の間取りがたくさん登場しました。これには家族の中であってもプライバシーを確保し個人を尊重するという考え方もあったようです。この背景には、家長制度や地元のしきたり的な個人を抑圧する社会的なつながりによるネガティブスピリッツがこれまで長く続いていたため、多くの人びとが辟易していた側面が潜在的にあったのだろうと思われます。
しかし、これにより子どもが引きこもる等のネガティブファクターもあり徐々に間取りの考え方に変化が現れてきました。子供部屋を計画するにしても、就寝以外の要素を個室から住宅内のパブリックな空間にセットするようになりました。家族のコミュニケーションの必要性が再認識されてきたことがその要因のひとつと考えられます。
この行動は、自宅から外へも拡がりを見せるようになってきています。
たとえば、職場内でのコミュニケーションスキルのニュースや、一人で居酒屋やバーにゆき同じ場にいる人たちと会話を楽しむなどの社会的現象にコミュニケーションへの渇望が見え隠れしています。このようなひとのたまり場で知らない他人と会話をするという行動は、コミュニケーションをシェアしているといえます。
これからの長期トレンドはシェアハウス
現在すでに盛んな動きを見せているのが、高齢者向けコレクティブハウス(シルバーハウス)やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)といった高齢者向け住宅です。これらも結局は一定の第三者のサポートと仲間を求めたコミュニケーションニーズに基づく動きかと考えることができます。
そしていまトレンド形成されてきているのが、若年層の潜在的リクエストである各種コミュニティアイテムになります。まちのなかにもコミュニティカフェができたり、地域活動への参加といったアクションが徐々に拡がりを見せています。とりわけ近年の大地震等の災害はコミュニティの必要性をより喚起しているといえます。
これが住まいというジャンルにおいても当然に求められてくるといえますが、これに応えることができるのがシェアハウスといえます。しっかりとしたコンセプトをセットすることにより建物の各種経年劣化による影響を少なくし、住居に内包されるコミュニティや趣味的な個性が永続的にひとを呼び込み、従来の賃貸住宅よりも空き室率の低減が期待できるでしょう。
大家さんも一緒にコミュニケーションや生活を楽しもう!
シェアハウスという特性上、コミュニケーションを大切にして毎日の暮らしを楽しくし、そして時に互いに助け合えることが期待できます。ある意味寮的な部分も受け入れる年齢層によってはあるかもしれません。ひとりでいるよりも誰かといる温かさと安心感は、自分の居場所がここにあるという心の平穏と豊かさを得られるでしょう。そこでは、いろいろなひとたちが互いにできることをして助け合うことが必要になります。ぜひ大家さんとなるあなたも一緒に暮らしをつくり楽しみませんか。
共に暮らす仲間をサポートするのが感共建築ラボのサロン
大家さんと住み手が一緒になって生活を創り守り楽しむためには様々な事柄に対応する必要が出てきます。これまでの賃貸住宅では、管理会社が賃貸契約や清掃等の担い手となっていましたが、居住者間のコミュニティに関してや周辺地域とのコミュニティ連携などについては基本的に担ってきていません。
このような既成の管理システムだけですとシェアハウスの運用においては手薄になります。そこで、シェアハウス内での企画や運用のサポーターとして感共建築ラボでは「サロン」のスキームにより皆が共にシェアハウスで暮らし活動できるような仕組みをご提供しています。ときには一緒にDIYや料理教室を開いたり、地域活動の連携など建物とまちづくりの専門家である建築家集団ならではのさまざまな活動をサポートします。
まとめ
賃貸市場に対する需要のパラダイムシフトが起き出していますが、これに応える居住環境は現在の賃貸市場ではまだごくわずかです。昨年、大手から小規模の不動産管理会社をヒアリング調査したことがありますが、これらの多くは既成の方法でしか管理ができません。つまり、需要が期待できるのにも関わらず既得権を守りたくてシェアハウスをすすめる不動産管理会社はほとんどいません。
また、現在シェアハウスを運用している多くは、トレーニング設備があるなどのモノとしての個性があるケースかシェアであることによる低家賃を売りにしているケースが大半であり、コミュニティを見据えた運用はまだ多くありません。
つまり、いまシェアハウスに取り組むのは需要の大きい分野への先駆けとなり、市場開拓の可能性が広がるだけでなくノウハウを蓄積するチャンスともいえます。これはある種のオピニオンリーダーとなることであり、そのノウハウは空き家率が大きくなり出す10年後以降の運用に対してとても有利に働くことになります。これから賃貸住宅経営をはじめるにあたり、ますます過酷な入居者争奪戦となる既存仕様の賃貸住宅と、これからシェア増大の可能性を秘めているシェアハウスのどちらを選ばれますか?
わたしたち感共建築ラボはいっしょに「楽しくシェアハウス生活をしたい!活動をしたい!」という仲間をお待ちしております。